「伊藤病院」閉院
■癒し系病院として皆さんに愛された医療法人誠仁会「伊藤病院」は、2014年6月1日に閉院しました。
■日本初の腹腔鏡手術を行い、わが国のリーダー的存在だった伊藤病院の腹腔鏡下手術は伊藤將史医師退職に伴い「いとう女性クリニック」に継承された。 カテゴリ
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今回は子どもの安全について(ちと長文)。
コンニャクゼリーによる窒息死が話題になっている。 1995年頃以降これまでに19人(うち子ども10人)の死亡が明らかになったようだ。そのうちマンナンライフ「蒟蒻畑」は3例のみであった(らしい)が、これを受けて、マンナンライフ社は自社の「蒟蒻畑」を発売中止にした。中止の理由はどうやら社長にお孫さんが生まれたかららしい。 ・・・ 一方、コンニャクゼリー発売中止をめぐって、ネットでは様々な意見が書き込まれている。 その一部(2チャンネルを除く)を紹介すると、 ▼私は、死亡した幼児の親は、親としての責任が欠如しており、殺人罪で処罰するべきだと思います。私の母や祖母もこの意見で一致しています。 ▼親として果たすべき義務、責任を食品会社や行政に転嫁しているのは、恥知らず、モラルや倫理の欠如も甚だしく、死んだ幼児のことを思うと、はらわたが煮え繰り返るような怒りをこの親に対して感じます。 ▼自身が子供嫌いのせいなのか、不謹慎ながらも近年思う事です。子供とは、平時では金がかかり、有事(離婚・事故等)では金ヅル〈慰謝料が貰える)と化すもの。 飲酒・酒気帯び運転厳罰化、回転ドア、エスカレーターと樹脂製サンダルなどなど。 もしもこれらの犠牲者が大人だったら違った結果になっていますよね。 ・・・ こうした書き込みは比較的行儀の良いwebで見かけたものだが、辛らつな言葉に正直驚いている。残念ながら、テレビのトークショウでも同じような傾向だった。 では、こうした子どもの事故をどのように考えれば良いのだろうか? コンニャクゼリーでは1995~6年にかけて5人の子どもが亡くなった。 このとき国民生活センターは警告を発したが、行政的な対応はなかった。 その後、約10年以上が経過した2006~8年にまた4名が亡くなった。 世代が替わり情報が引き継がれなかったのも原因だろう。 また、1996年に軟らかく改良されたゼリーはその後再び食感を求めて硬くなったのも原因かもしれない。 窒息が原因で死亡する総数は、年間3700名!を越える(平成19年度)。 このうち80%以上は65歳以上であるが(意識不明の寝たきり病人も含まれる)、0歳が85名、4歳以下26名、9歳以下9名、14歳以下が5名と少なからぬ人数〈125名)の子どもたちが窒息で命を落としている。 他方、子どもの事故の原因は、交通事故・誤飲・中毒・火傷・熱傷・窒息・溺水・外傷・刺咬傷・熱中傷・ガス中毒・感電・異物の侵入など様々で年齢ごとに発生率は異なるが、平成19年度は578名の子どもが不慮の事故で死亡している。 これを少ないと見るか、多いと見るか・・・。 死亡率を見ると、大人の死因の1位は癌や肉腫などの悪性新生物、2位は脳血管障害、3位は心疾患で、これを受けて国は「国立がんセンター」や「国立循環器センター」を設け、高度先進医療で現状に立ち向かっている。 これに対して、子どもの死因は、1位が不慮の事故、2位が悪性新生物、3位が先天奇形で、2位、3位とも生まれつきの身体の異常によることが多い反面、1位の不慮の事故は健康な子どもに起こる、いわゆる「怪我」である。 そして、ある事故(怪我)でひとりの子どもが亡くなった場合、類似の怪我が実は全国で数千人以上の子どもに起こっているという調査結果がある(子どもの事故氷山図)。 話が長くなった・・・、結論を急ぐ。 こうして考えてみると、「子どもの事故」は〈accident)ではなく、国と社会全体が一丸となって対処すべき「疾病〈injury)」のひとつとしてとらえねばない。「疾病」と考えると対処法は明確になってくる。つまり、疾病に対するワクチン(予防策)を構築すればよい。 具体的には、「子どもの事故情報センター」を設置し、子どもの怪我の届出義務を病院と医者に課し、全国的に収集された情報をから、その原因の分析をする。その結果の具体的予防策を全国に向けて発信し続けるのである。さほど予算のかかる事業ではない。 地道なことだが、これで確実に死んでいく子どもたちは減る。 コンニャクゼリーによる子どもの窒息では、親(保護者)の責任を第三者が辛らつに責めることもできないし、製造メーカーの責任のみを追求することでも今後のよい結果は得られない。 子どもの事故は、親(保護者)が加害者のように責任を問われ、また同時にその親(保護者)は子どもを亡くした被害者でもあるという2面性をもっているから、事故後の家族の心情を慮ると人ごととは思えない難しさがあるのである。 長い不妊期間の後、やっと産まれてきた孫を車に乗せた爺さんが側突事故に出会い、孫を死なせた。お爺さんはチャイルドシートをさせていなかったことを悩み、自殺した事例を私は知っている。・・・孫をコンニャクゼリーで死なせたお祖母さんが、思い悩んで自殺するとも限らないのである。 こうした子どもと家族も救わなければならない。「的確な危機意識を優しく共有できる成熟した社会」を目指すべきであろう。・・・何も難しいことではない。
by Dr_M_Itoh
| 2008-10-21 12:58
| 子どもの事故
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