外来における説明は、ほんと、難しい…。
当院には、大きな子宮筋腫で悩んでられる患者さんが多く訪れる。彼女たちは他施設で無理だろうといわれた手術が伊藤病院では叶うと期待して駆け込んで来られるわけだが、私が「前の先生の説明が標準的な考え方で、筋腫だけを取って子宮を残すことはあなたの場合、少々無茶な要望だよ」とお話しすると、「ガーン!」と出鼻を挫かれ失望の表情を浮べられることがある。
伊藤病院では未婚、未産の方(45歳未満)の子宮は極力残すように努力してきた。今後もその方針に変わりはないだろう。しかし、経産婦で今後妊娠を望まない方に対しては子宮摘出の方が結果が良い場合もあるので、個々の病状に沿って説明をさせていただいている。
こういったお話を申し上げるのは、最近、腹腔鏡下手術で簡単に手術ができると思ってらっしゃる方が急に増えてきたように思う。(術者仲間で話題になっている全国的な傾向)
腹腔鏡下手術は、その普及過程で、傷が小さく患者さんは術後が楽だという利点が強調されてきた。しかし、腹腔鏡下手術は決して魔法の(ように楽な)手術ではない。リスクも高いし、術者の体力の消耗も大きい。お伽噺の「鶴の恩返し」に登場する鶴が自分の羽毛を抜いて(だから僕、禿げたのかなぁ~?!)織物を織るように、術者はその体力を振り絞って手術を成し遂げるである。無理をすると、出血や再手術のリスクも高まる。
ポンと病院に来て、サッと手術が終わり、スッと職場復帰できる類のものではないのである。
参考:お伽噺「
鶴の恩返し」
こうしたことをいちから順序だててゆっくりと話せばよいのだが、前の病院で診てもらってある程度の知識があるだろうと思って、ついつい段飛ばしで冒頭のような説明すると、
『伊藤先生は何でも叶えてくれると聞いたのに~!』と、・・・。
・・・患者さんの望む説明を差し上げるのは難しいものである。