ソフトバンクホークスの王貞治監督が胃癌のため、慶応大学病院で腹腔鏡下手術を受けた。北島先生のグループが執刀したらしい。本手術によって根治(病巣が全部取り除ける)が期待できたなら、手術治療としては完璧だ。これほど嬉しいことはない。あとは1週間ほどで判る病理診断結果で病巣の大きさと転移のないことを確認するだけだ。
今回の王監督のニュースで腹腔鏡下手術の優秀さが世間にさらに認知されるだろう。
腹腔鏡下手術は1970年代にドイツの産婦人科領域(ゼム医師)で始まり、1980年代には、CCDカメラの超小型化によって、ビデオモニターによる腹腔鏡下手術が産婦人科を中心に発展し、子宮全摘が可能なまでになった。我々が日本で初めて腹腔鏡下手術を導入したのが1989年。その後まもなく、1991年には、胆嚢摘出術がわが国の外科領域にも導入され爆発的に普及した。その後、いろいろなた臓器に本術式が適応されるようになる。
1990年頃、私はまだ40才だった。ついこの間のように思えるが、すでに20年近い時が流れようととしている。この間、ほとんどすべての体腔内臓器の手術が内視鏡下で可能なまでになった。
わが国民を代表する王監督に、その技術が適応できたことを腹腔鏡術者のひとりとして、心から喜びたい。・・・誠に感慨深いものがある。
参考;腹腔鏡下手術は誰にでも出来るものではない。慶応グループの実力は世界的なものであろう。治療を選択される場合は、この点をしっかり見定めないと、よい結果が得られない。まだまだ術者不足なのである。