先日、看護師さんが当院での腹腔鏡下手術を求めて来院されました。自分の勤務するところで手術を受けたくない、また腹腔鏡下手術の上手なところで手術を受けたいということが、来院の理由でした。
手術日が決まって術前の外来説明をしていると、ご質問の中に、
「手術合併症の腸管損傷が起こったらどうするのか?」という質問がありました。
「可能な限り、腸管損傷などを避ける手立をしている。これまで1000例ほどの症例で腸管損傷の経験はない。理論上はありえるが、過剰な心配はされないように。」と申し上げました。
「・・・ということは、腸管損傷修復の経験がないと言うことですよね?」 「ん・・・(・・;?」
思わず、横にいた看護師が私の顔色を窺った。・・・私が気を悪くしていないかって
心配したのだろう。 でも、私は彼女の直球のような質問に、全く気にならなかった。
(むしろ、彼女はプロだから質問は的をえており、よく理解していると感じた。)
結局、「損傷が起こったら縫合修復するから、腸内細菌を綺麗にするお薬を飲んで事前にしっかり対応をしておこう」ということになりました。
では、実際のところはどうなのでしょうか?
腸管損傷に手術中に気がつけば、縫合修復などの対応ができます。しかし、目に見えないところで高周波の副電流などで起こっていると全く見えませんし、発見できません。穴が見えないパンクのようなものです。十分に注意をして、早く見つけ、早く対応するしかないのです。
縫合の技術に関しては、例えば当院では細い卵管の端と端を繋ぎ合わせるようなマイクロ再建手術も可能なレベルにありますので心配はいりません。
・・・
それにしても、腸管損傷の経験豊富な術者ってどんな人だろう?
よく合併症を起こす人でないと経験は豊になれないし・・・。
確かに起こす人は、繰り返してよく起こす。そして、そんな人はまた緊急対処も苦手だ。
『腹腔鏡下手術』ではなく、『腹腔鏡、下手(へた)術』、 うーん・・・、奥が深い。
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