前のコラムでお話したように、子宮内膜症の主症状は、月経痛、性交痛、排便痛などの疼痛や過多月経、貧血です。また、不妊の原因になることもしばしばで、不妊症の原因検索で腹腔鏡検査を行ったところ子宮内膜症が発見されることがよくあります。
5~10年前までは、子宮内膜症の診断と治療指針は、
1.
腹腔鏡検査による確定診断、
2.GnRHないしダナゾールによる
薬物療法、
3.必要に応じて
開腹手術とされるのが一般的でした。
しかし、1,3は全身麻酔下での手術と入院を要することから、未婚で手術をしたくない人や、手術設備のない医療機関で治療を受けている人は、2の姑息的治療のみを繰り返すしか方策はなく、この場合、一定の治療期間(半年が目安であることが多い)が終了すると、またさらに悪化するのを受け入れるしか治療手段がありませんでした。
しかし、最近、腹腔鏡下手術の応用により子宮内膜症の様々な病変に対して手術治療がおこなわれるようになり、従来であれば開腹手術を要したケースでも腹腔鏡下手術で大きな侵襲を回避出来るようになりました。さらに、熟練した医師が行えば、開腹手術よりもより確実で精度の高い手術ができるようにもなりました。
この事は、先に述べた1.腹腔鏡検査、2.内科的治療、3.開腹術という診断治療指針は既に過去のものとなり、A.腹腔鏡検査・手術とB.内科的治療の2者の組み合わせによる治療が主流になってきたことを示しています。
子宮内膜症に対する
腹腔鏡下手術は、未婚女性や妊娠を希望されている患者さんにとっては、傷も小さく、術後の癒着も少ないので大きな福音といえるでしょう。