1988年、滋賀県の公立病院に勤務していた私のもとに、子宮内膜症の先進手術を扱う医療機器会社の手術ビデオを見る機会がたまたま舞い込んだ。
それは腹腔鏡手術の異端と称されたドイツ キール大学のK.Semm教授の手術デモビデオだった。
本やスライドで見たことはあったが動画は初めてだ。
1-2センチの小さな傷から手術をしてしまう、当時「Key whole surgery=鍵穴手術」と呼ばれた技法だ。
この手術をみて、不遜にもこれなら私でも出来る!と思った。
同時に何故日本ではこの術式は見向きもされないのだろう?と不思議にも思った。
担当者に「このVHSビデオをダビングしてくれませんか?」と尋ねたが、
「いえ、ダビングは固くドイツから禁じられています」との答え。残念・・・、でも咄嗟に妙案を思いついた。
「じゃ、今度の医局会でもう一度他の医者達にも見せたいので上映してくれませんか?」
「はい、もちろん大丈夫です」
「有難う!」
当日、医局会のビデオデッキのLine out から隣室へ長~いRCAケーブルを引っ張り、
録画待機にしておいた。勿論、私の他は誰も知らない。
「じゃ、上映をお願いします」
・・・
「今日はどうも有難う御座いました!」
医局会が終わって隣室のビデオデッキに駆けつけた。・・・うまくいった!
そこには今上映された手術のダビングテープが出来上がっていた!
1988年の事である。
(当時は、パソコンはおろかデジタルビデオの技術もなく、VHSビデオに代表されるアナログの
時代であった。PCが開発されウインドウズ95が発売されたのは1995年だから・・)