1990年代に俄かに出現した腹腔鏡手術は20世紀最大の手術革命と言われ、
以降30年の間に瞬く間に世界中を席巻した。
この時期は日本ではちょうど「平成」の時代にあたる。
私はその腹腔鏡手術の黎明期からその発展と普及に身をおいた。
しかし、「令和」になって私も古稀を迎えた。今では手術執刀は控え、これまでの経験を踏まえて腹腔鏡手術を受けようかと悩んでおられる患者さんに寄り添って、本音のアドバイスしている。
残念なことに、婦人科良性疾患のほとんどが腹腔鏡で治療されるようになった現在でも、いまだに腹腔鏡の説明をせずに開腹手術を選択する病院がある。
はっきり言おう!
今の時代に、手術治療の選択肢のひとつとして「腹腔鏡手術の適応」の可否を説明することなしに、開腹術を行ってしまうことは加療側の医師の説明不足である。
「腹腔鏡手術は貴方の場合癒着もありそうなので開腹術の方がよい」と説明されたら、
貴方は、その病院の開腹術と腹腔鏡手術の比率を訊ねるべきである。
腹腔鏡手術の割合が高い病院でそう言われたなら、医師の説明を信じよう。
開腹手術の割合がとても高い場合は、その病院は腹腔鏡手術を取り扱っていない可能性があり、その説明は開腹術に誘導している偏った内容かもしれない。
そんな場合は、セカンドオピニオンをもとめるべきである。
例えば具体的な症例として:6センチほどの大きさの卵巣奇形腫で腹腔鏡手術は難しいと言われ開腹術を勧められた。その病院では腹腔鏡手術は年間数例しか行われていない。それも他院から医師を迎えて執刀している。
こんな場合は、よく検討してみる必要がありそうだ。