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産婦人科 伊藤病院
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一昨日の新聞で、北海道で、車内に残された乳幼児4人が焼死したというなんとも痛ましいニュースをみた。
親御さんには、この世の終わりとも、いやそれ以上の、生き地獄のような悪夢だろう・・・。 (私も職業柄、この記事をとりあげねばならないが、このブログをアップすることさえ悲しみとやるせなさを覚える。) 正直、辛い・・・。恐らく親御さんは、「車内から連れ出しておけば・・・」と後悔されているにちがいない。 ・・・時間を巻き戻して欲しい! しかし、ここで考えてみなければならない事がある。 これまでにも述べてきたが、子どもを車内に残すことは、常に高いリスクがある。 車内熱射病。チャイルドシートのベルト巻きつき事故。今回の火災。 その被害者は子ども自身であり、親御さんは間接的な加害者である。 そしてその親御さんは、また同時に、生き地獄に曝される「被害者」なのである。 それにしても、辛い・・・筆舌に尽くしがたい。 まだ寒い日がつづくが、日中は思った以上に車内の温度が上る。 車内熱中症にはくれぐれも注意を願いたい。
今年の箱根駅伝は駒沢大学の優勝で幕を閉じた。
私自身駅伝にはまったく興味はないが、今日のニュースで関東学連の青葉昌幸会長が「情けない。最近の選手は早いが強くない」とコメントをしているのを読んで、憤りを覚えた。 脱水や過呼吸は誰にでも起こる身体的な異常であり、これを根性論で片付けられてはたまらない。将来のある若者達を無知な知識と根性論で潰してしまうことのなきよう連盟には厳に猛省を促したい。 駅伝はグループの結束が固く、死んでも襷を渡すという鬼気迫る走り方をする団体競技である。自分自身が気付かない興奮状態がレース前から続いているといえる。 根性論をぶつ位なら、5キロおきに給水ポイントを設置し、スペシャルドリンクを用意して欲しい。そうでないと年々高速になる駅伝に今回のようなことがどんどん起こってくるだろう。 門外漢ではあるが、子供の安全ネットワーク・ジャパンの事務局長でもある私はあまりに無茶な批判に一言文句を言いたくなった・・・。 (参考ブログはこちら)
本日、紀子様と秋篠宮悠仁親王が愛育病院を退院される。退院準備品の中にチャイルドシートも含まれているらしい。チャイルドシート普及活動の本家としては、どのような種類のシートをお選びになったのか、興味津々である。・・・今日答えは出る。
小さな女の子がプール吸水口で亡くなるという何とも痛ましい事件があった。「事件」と書いたのは事故と呼ぶには、あまりに社会の安全意識が低いゆえに起こった人災だったからだ。
それでは、どうしてこのような事故が起きたのだろうか? どのような対策がしてあったら、子どもは死なずに済んだのだろうか? 私なりに考えてみた。 事故直接原因は、外柵の固定ボルトが外れていたことである。これを管理していた会社の責任は免れまい。 しかし、もっと重大な過失はプールを造った時に、文部科学省が指定した内、外の二重の柵の設置工事が、実際には行われていなかったことだ。さらに、そういった欠陥プールの使用を認可した担当行政にこそ最大の責任がある。聞けば、全国に同様の状態は2239件(NHK調べ)あったという。 この数字を見ると、文部科学省のガイドラインは実体を成していないことになる。 ビルの耐震構造偽装が問題になったが、悪意があるかないかは別として、今回の事故はそれとよく似た社会構造が生んだ「未必の故意」による「事件」である。危険を認識していながら、その対策をおざなりにした大人社会の態度は、本来なら未来のある子どもたちから糾弾されるべきで問題である。 では、具体的な対策を考えてみよう。 結論を言えば、今回のように物理的に単純な故障で起こる事故は予防策が立てやすい。 判りやすいように、ある液体を送る回路で確率を計算しよう。 例えば、自動車のガソリンはガソリンタンクから電動ポンプで回路に送られている。このポンプが故障すると当然エンストする。電動ポンプが故障する確率が仮に1万分の1としよう。安全のため2個ポンプを回路につけておくと、この回路が故障する確率は劇的に低くなる。すなわち、2個とも故障する確率は1万×1万分の1、すなわち(えーーっと・・・)、1億分の1になるのだ。 このように、2重の事故防護対策は事故発生率を二乗に比例して減少させる。 外柵の中にある吸水パイプ口に、もうひとつ格子のフィルターが組んであれば、外柵が外れても回路の中までは吸い込まれなかったはずだと考えられる。 さらに、緊急停止ボタン装置や吸入圧が高まった時に減圧する側副回路を設けておけば、より完全に近い事故防護対策といえるだろう。 今回の事故は、ジェットバスで髪を引っ張られて亡くなった事例、プールの排水溝に引っ張られて亡くなった事例など、よく似た状況で起こった事故から何も学ばないために起こった事件である。 少子化対策が叫ばれる昨今、亡くならずに済んだ子どもたちを救うことが社会の責任と考える。産婦人科医や小児科医はその権利を主張できない子どもたちの代弁者として立ち上がるべきで、受身の医療だけを行って傍観していることは許されない。予防医学こそ大切なのである。 追)日本社会は事故は絶対起こしてはならないと考え、西欧社会は事故は起こりうるので予防策を考える。日本では子どもの事故死の約3人に一人が、適切な予防策が講じられていたならば亡くならずに済んだと統計がある・・・。今回はその典型であろう。 ご冥福をお祈りします。
危険なおもちゃ:誤飲の恐れや異臭に注意を、と国民生活センターが呼びかけた。
玩具売り場には、カラフルで面白そうな多種多様なおもちゃが並ぶ。ところが、国民生活センターが調査したところ、子どもがのどに詰まらせる危険性があったり化学物質の異臭がしたりする製品が何種類も見つかった。購入する際には、安全性を第一に考えて選びたい。 同センターに寄せられた危害情報のうち、玩具に関するものはこの5年間で1820件寄せられている。「9カ月の子どもがおしゃぶりを全部口へ押し込み、のどの奥に詰まらせた」「積み木を口に入れたままうつぶせになり、口の中にけがをした」といった事例があったため、口に入れる可能性の高い玩具の安全性を調査した。 調査対象は18カ月未満の乳幼児用の玩具で、ガラガラや歯固めなど33銘柄。日本玩具協会の安全基準と試験方法を参考に、子どもの口腔(こうくう)内のサイズを模した検査用器具に通したところ、3分の1に当たる11銘柄が通過または器具から突き出て、実際に口に入れると、のどに詰まらせたり傷つけたりしてしまう可能性があると分かった。同センターは「子どもが遊んでいる時は目を離さないように」と呼びかけている。 一方、塗料で着色された積み木など木製玩具の中に、揮発性有機化合物(VOC)のトルエンやキシレンが放散されるものがあることも分かった。 同センターに寄せられた情報の中には「袋詰めの積み木を購入し開封したら異臭がして、子どもが気持ち悪くなった」「積み木が変なにおいがして目がちかちかする」などの苦情があった。 塗料で着色された0~3歳児向けの木製玩具14銘柄を一定量の空気と共に密封し、24時間たってその空気を分析したところ、7銘柄から塗料の溶剤として使われるトルエンやキシレン、エチルベンゼンが検出された。これらは男女14人によるモニターテストでも、においが強く、不快度が高かった。 玩具からのVOCの放散については、基準がない。経済産業省製造産業局日用品室は「対策として何ができるのか、業界と相談していきたい」と話す。同センターはメーカー団体の日本玩具協会に、放散をできるだけ低減するよう要望した。 毎日新聞 2006年1月13日 東京朝刊から
チャイルドシートの法制化を機に、私たちがリクルート出版から発行した「チャイルドシート完璧マニュアル」は100万部以上印刷され、保健、交通行政機関やトヨタをはじめとする各自動車メーカーを通じて全国のいたるところに配布されました。
その冒頭に以下の文章を載せました。 『社会の原動力は「子ども」にあるといえましょう。 いつの世も大人たちは「子ども」の未来に夢を託し、励まされながら生きてきました。しかし、21世紀を迎えようとしているいま、少子化が深刻な問題になってきています。 年々その数が減ってゆく「子ども」たちのために我々に何ができるか? 現在世界中で、多くの子どもたちの命や健康が失われていますが、 先進国においては、その原因の1位は飢餓や病気ではなく、不慮の事故なのです。 すなわち、「子ども」を事故から守ることは、私たちの社会の「未来」を創ることにほかならないのです。』 こうした理念は、法制化が成ったあとの今も、伊藤病院の後輩ママに引き継がれています。 そして、伊藤病院の診療理念である「安全」の根本思想にも強い影響を与えています。 当院のHPにドロシー・ローノルト女史の「子どもが育つ魔法の言葉」が登場するのも、子どもの安全を標榜する当院のポリシーに彼女が応えてくださったものです。
前回のコラムで述べた活動は全国に草の根的に拡がり、子どもの不慮の事故防護を目的に「子供の安全ネットワーク・ジャパン」という啓発団体が結成されました。そして、この団体の活動が行政を動かし、2000年にはチャイルドシート着用義務化が法制化されたのです。
・・・ということは? そうです! 伊藤病院でお産をして私の説教に耳を傾けていただたお母さんたちの行動が、日本を動かし、チャイルドシートの法律をつくったのです。 なんと素晴らしいことではありませんか。
当院では、10年近く前から、産まれた赤ちゃんをチャイルドシートに乗せて退院していただく啓発活動を始めました。・・・日本で初めての試みでした。
当時、この企画を病院のスタッフに提案したところ、ほとんど全員から「えーっ!」と、ひどく反対されました。当院で産まれた赤ちゃん全員が対象でしたから、「半ば強制的では妊婦さんに迷惑がかかる」、「伊藤病院に誰もお産に来てくれなくなる」、「忙しいので対応できない」などが、反対の理由でした。 私は反対や障壁があると俄然頑張る性質(たち)で、「産まれて来た子どもたちの命を守るためだし、しいてはその子のご家族のためでもある。このような過激な啓発を提唱をする産婦人科医は変わり者かな?」、「伊藤病院だからこそできる社会貢献だと思うよ」とスタッフたちに居直りました。 その結果、周産期を通じて、次のようなことを実施することを条件に、スタッフの全面協力を得ることができました。 1.産まれてきた赤ちゃんの命の大切さと、それを守る方法を教える。 2.不慮の事故が子どもの死因の一位であることを伝える。 3.チャイルドシートを安く購入できるシステムを導入する。 4.院内に無料貸し出しができるチャイルドシートを準備する。 5.チャイルドシート着用実地教室を開催する。 6.この活動を全国の産院に拡大する。 7.将来は、チャイルドシートのみならず、子どもの事故全般に対して啓発運動を展開する。 こうして、早速、伊藤病院でお産をされる妊婦さんたちに、「お子さんにとって安全な家庭環境が如何に大切か」、「チャイルドシート着用を通じて、子どもの安全に対する親たちの意識を高めてほしい」と訴えはじめました。 啓発活動を始めた次の月から、自家用車で退院されるお母さんたちのほぼ全員が、赤ちゃんをチャイルドシートに乗せて退院してくれました。伊藤病院の患者さんたちは私の唐突な提唱を理解していただく豊かな気持ちをお持ちだったのです。 チャイルドシートに座って退院していく赤ちゃんを見て、大変に感激したのを昨日のことのように覚えています。1997年6月のことでした。 (つづく) < 前のページ次のページ >
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